隠匿資産1000億円超への飽くなき欲望(6)

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A氏は、鈴木が2通の手紙で「和解書」を白紙撤回し、平林弁護士と友人の青田を代理人に指名した事により鈴木と連絡が一切取れなくなったことから、平成27年7月に東京地方裁判所に「貸金返還請求」の訴訟を提訴した。請求金額は当初は25億円だったが、実際の貸付総額は28億2千万円(元金のみ)となっている。内訳は約束手形(13枚)合計金額16億9千万円、借用書(2枚)分3億8千万円、商品委託販売分7億4千万円だった。

(写真:平林英昭弁護士。代理人襲撃事件の実行犯が所属する暴力団総長と複数回面談するなど、弁護士の倫理規定に反した言動を繰り返した)

鈴木の代理人は交渉時の代理人の平林弁護士、そして親和銀行事件時の代理人であった長谷川幸雄弁護士だった。平林と長谷川は、エフアール名義の約束手形分約17億円と借用書分3億円は債務者がエフアールであり、鈴木個人ではないと主張し、商品販売委託分7億4千万円は実体のないものと主張した。さらに、短期間での莫大な手形融資(約17億円)についてもA氏の貸し方が経験則上、倫理上あり得ない事として求釈明を連発したのであった。A氏側弁護士は証拠書類を法廷に提出し、確信を持って貸付金が全て事実であると主張した。鈴木側には反対弁論を裏付ける証拠は皆無で、ただA氏側の弁護士の「揚げ足取り」や言いがかりに終始するという卑劣極まりない弁護方法で、いたずらに裁判を長引かせる戦法を取った。途中で裁判長が交代する事も影響してか、約2年半を経過しても裁判は結審しなかった。A氏側は訴訟内容に自信を持ち、早期に勝訴判決が出るものと考えていたが、遅々として進まない裁判に業を煮やして、当初の代理人弁護士が辞任する中で知人の紹介で新たに中本弁護士を代理人として起用した。そして中本弁護士の奮闘で裁判はA氏勝訴の方向に向かっていたように思えたが、裁判所は再度、裁判長を交代させ、品田幸男という裁判官を裁判長に就任させた。この裁判長交代が裁判の流れを大きく変える結果となった。

(写真:長谷川幸雄。裁判終結後に弁護士を廃業した)

後日の判決を検証すると、裁判長交代は裁判所の作為の下に行われたことが疑われる。何より品田裁判長が就任してから約半年で結審し、判決が下されることになったからだ。ところが、品田裁判長が下した判決は誤審を繰り返した挙句の誤判だった。裁判の焦点となっていた債権債務の額について品田裁判長は約束手形13枚分の約17億円と鈴木が親和銀行の逮捕前に借りた8000万円等を鈴木の借入金元本として認めたが、鈴木がエフアール名義で借りた3億円の借用書はエフアールの債務とし、貴金属宝石業界に対する知識と業界特有の慣習を全く理解できない品田裁判長は商品販売委託分の7億4千万円についても「経済的に不合理な取引」として鈴木の債務から除外してしまった。その結果、元本約19億円に利息等を加算してA氏の提起した貸金返還請求訴訟を何故か25億円で確定させてしまったが、特に詳細な計算を示したわけではなかった。
これは、A氏側にとって当然、納得できない判決であった。また、就任当初は鈴木側に鋭く切り込んで、一時はA氏の勝訴を確信させたように見えた中本弁護士だったが、ある時、鈴木の代理人の長谷川弁護士に法廷で裁判長が注意するほどの大声で恫喝をされてからは極端に切れ味が鈍り、オドオドとした弁護が目立つようになった事も、少なからず判決に影響したように思われる。これは老獪な長谷川弁護士の法廷戦略だったと思われる。そして品田裁判長の判決で示した25億円には明らかに鈴木一辺倒の姿勢が顕著に見られた。誰の目から見ても、考えられないようなコジツケの判断で、偏見だらけの判決には大きな不審を実感させた。
ここで、鈴木が実際にA氏に支払った金額を検証してみる。

(写真:鈴木が書いた15億円の借用書)

A氏が鈴木から受領した金銭は確かに合計25億円であった。しかし、その金額のうち、借金返済として鈴木がA氏に支払ったのは平成11年7月30日の5億円と平成14年12月24日の10憶円の合計15億円のみであった筈だ。そして、この15憶円も実際は鈴木が隠匿していた株取引の利益金を横領して支払った金だった。
平成14年6月当時、A氏の鈴木に対する貸付金は約40億円(年利15%で計算)になっていた。ただし、鈴木が平成9年10月15日に持参した3億円の借用書によれば、金利は年36%で遅延損害金は年40%になっており、それで計算すれば当時でも60億円以上になる。しかし、西が「社長、今後、株取引での配当金が大きくなるので、鈴木への貸付金残高を25億円に減額してやってくれませんか」とA氏に懇願した。平成11年7月30日に株取引の配当金5億円と2人から債務返済金として合計10億円を受け取っていたA氏は「今後は株配当金が増えていくだろう」と西の話を信用し、鈴木の債務残高40億円超を25億円に減額する事を承諾した。そして6月27日にA氏と鈴木、西が面談し、債権債務の整理をする意味で借用書を作成することになった。しかし当日、突然鈴木が「西さんに社長への返済金の一部10億円を渡しています」と言い出したのである。A氏は事前に西から何も聞いていない為に西に確認すると、西が鈴木に対し不服そうな顔を向けながら渋々認めたので、その場で鈴木が15億円、西が10億円の借用書を作成した。

(写真:西が書いた10億円の借用書)

この日、A氏は後日の為に公証役場の確定日付印を取っている。この時点で鈴木が西に渡したという10億円の問題の真偽は判明していないが、以前鈴木が「合意書破棄の報酬」として西に10億円を支払っており、金銭欲の深い鈴木は、その分をこの場で取り返そうと目論んだ事だと想像できる。西に反論する時を与えなかった鈴木の作戦勝ちであった。鈴木の悪知恵と悪党振りはこのように随所に見え隠れしているのだった。まして鈴木はこの15億円を「社長、この15億円を年内に持参しますので10億円に減額してくれませんか」と交渉して10億円で承諾させ、同年の12月24日にA氏に支払っている。平成11年7月30日の15億円は宝林株の利益配当分であって、全額がA氏への債務返済金ではなかったが、品田裁判長は15億円全額を鈴木の借入分返済額とし、この日の10億円と合わせて25億円を返済したものとしたのだった。これは明らかに辻褄合わせとしか言えない。そして、そもそも親和銀行事件で逮捕され、被告として公判中だった鈴木にそのような莫大な金額を支払える資力は無かったのは明らかだ。鈴木が株取引で上げた利益金を横領して支払う他に方法は無かった事は、A氏と出会った時からの経緯を検証すれば簡単に分かる事であった。しかし、品田裁判長は「合意書」に基づいた株取引に関わる経緯を全て無視して、25億円で「貸付金返還訴訟」を終結させた。これは明らかに故意的な「誤判」であって公正公平な判決とは言えない。つまり、品田裁判長には強引に裁判を終わらせなければならない理由があったと考えられる。
それは、「合意書」締結による株取引と和解協議による「和解書」の事実を認めると、この裁判は政界、経済界を巻き込む大事件へと発展し、警察、国税庁、財務省の職務怠慢が世間に知れることになり、世界中に恥を晒すことになるからではないだろうか。
その理由は、鈴木がA氏との約束を反故にし、株取引で上げた莫大な利益金を独り占めし、タックスヘイヴン地域(租税回避地域)に隠匿していたからだろう。
鈴木は、当初の宝林株相場から海外にダミー会社を準備し、そのダミー会社を経由して海外に違法送金を繰り返していた事は周知の事実であった。ネットニュース数社の記事によると鈴木がタックスヘイヴン地域に隠匿している金額は1000億円を超えるとみられる。平成18年の和解協議時に鈴木が獲得した利益金は470億円だったという事は、鈴木に取得株の売りを任されていた紀井氏の証言と法廷に提出された陳述書で判明しているが、品田裁判長は、この紀井氏の証言を完全に無視してしまった。「紀井氏は株式売買の詳細を知る立場に無かった人間」として切り捨てたのであった。これも品田裁判長の故意的な過ちの一つだった。和解協議から15年余りが経過している現在、タックスヘイヴン地域のプライベートバンクが提示する利回りを考えると、470億円の隠匿利益金が1000億円を優に超える額に達しているという推認はまんざら架空の数字ではない。
タックスヘイヴン地域に関しては「パナマ文書」が世界中を騒がせて以降、2003年(平成15年)のG20 (先進20ヵ国による国際経済会議)で脱税行為の具体的措置が講じられた。鈴木の行為が表沙汰になれば、日本は世界中から批判の的になり、間違いなく国の信用に関わる事態になる。裁判所はこの事を恐れ、鈴木の悪事を隠蔽したのではないか、という疑いは濃厚となる。品田裁判長は「誤審」を冒してでもこの裁判を終結させるよう裁判所の意向を受けていたのではないのか。これは決して妄想ではないほど判決がひどい過ちを冒しているのだ。品田裁判長の独断的な誤審誤判は、妄想を掻き立てるほど理不尽で不平等な裁判結果となった。
品田裁判長が「合意書」は「合理性を欠き、重要な個所の文章が曖昧」として無効にし、「和解協議」は鈴木の「心裡留保が原因」として無理矢理無効とした理由は、以上の事が起因していると思われる。
株取引を巡るA氏の被害額は、買支え資金で200億円を超え、西が書き残した鈴木から受け取るべき配当金を債権としてA氏に譲渡した額は137億円に上っていた。
一般には想像の範囲を遥かに超える金額ではあるが、A氏という個人資産家が鈴木と西という2人の詐欺師に騙され、裏切られた事は真実なのだ。この誤審裁判の重要な部分は次章で詳しく触れる。(以下次号)

2023.06.18
     

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